こどもの近視について
近視の原因はまだはっきりしておらず、 遺伝的要素と環境的要素が考えられています。 小さい頃からある程度の近視があれば遺伝性の可能性もあります。現代の生活ではどうしても近くの物を見る機会(テレビ、パソコン、スマートフォン、読書、勉強)が多いので近視が進行していくことが多いようです。
子供の視力についてはまず正確に視力を知ることが大切です。学校で視力検査は毎年行われていますが、これはあくまでもスクリーニングが目的です。子供の視力を正確に把握するためにも、最低年2回の視力検査をこころがけましょう。
仮性近視
低年齢のお子さんの近視の場合、水晶体の厚さを調節している毛様体が異常に緊張して、一時的に近視の状態になることがあります。これを仮性近視といい、調節を麻痺させる働きのある点眼薬をつけて治療します。
近視進行の予防について
近視進行を抑制する効果があるものとして、現在エビデンスがあるものは以下の通りです。
- ① バイオレットライト
- ② オルソケラトロジー
- ③ 低濃度アトロピン
- ④ 焦点深度拡張型コンタクトレンズ
①のバイオレットライトとは、太陽光に含まれる波長360~400mm(紫外線とブルーライトの間)の光です。外で過ごす時間を1日2時間以上とることが、近視抑制につながることが分かっています。お手軽なのでぜひ、心がけていただきたいです。
②オルソケラトロジーは就寝中にハードコンタクトレンズを装用することで、日中の眼鏡やコンタクトレンズが不要になるという治療ですが、近視の進行を抑制するというメリットもあります。ただレンズが高額なのと、治療も保険適応が認められておらず自費になるので、経済的負担が大きく、またレンズの扱いが適切でないと、眼にトラブルを起こす可能性もあります。当院ではお取り扱いしておりません。
③低濃度アトロピンとは、通常1%のアトロピン点眼を100倍に薄めて点眼するという方法です。
海外の論文では、副作用を最小限にして安全に、なおかつ十分な近視進行抑制効果が得られることが数多く報告されています。2015年の米国眼科学会(AAO)では、これまでの研究において、未治療群の小児と比べ0.01%アトロピン点眼薬投与群では近視の進行を約60%抑制する効果も明らかになっています。
次のグラフは4種類の濃度のアトロピンを点眼した結果です
シンガポール国立眼科センター(SNEC)の研究結果です。これは、眼鏡をかけている学童の平均近視進行から比べると、0.01%アトロピン点眼薬投与群は近視の進行を約1/3に抑えられるというものでした。
(第65回臨床眼科学会 子どもの近視予防と3D映像の影響と予防)より
※日本でも7大学(旭川医科大学、大阪大学、川崎医科大学、京都府立医科大学、慶応大学、筑波大学、日本医科大学)にて臨床研究が行われています。
低濃度アトロピン0.01%の特徴は次の通り
- 副作用がほぼ皆無の近視抑制薬であること
- 近視の進行を平均60%軽減させる
- 日中の光のまぶしさに影響を及ぼさないので、サングラスはほぼ不要
- 目の遠近調節機能(手元を見る作業)に殆ど影響を与えない
- 近見視力の低下に殆ど影響を与えず、更に累進屈折眼鏡も不要
- 治療法は毎日就寝前に1滴点眼するのみ
- 目薬は両眼用で1カ月の使い切り
対象となる方
低濃度アトロピン0.01%による治療の対象となる方は次の通り。
- 6~17歳
- 中等度(-6D)以下の近視である
- 最低でも2年間以上の継続を推奨
- 3カ月毎の定期通院が可能であること
低濃度アトロピン点眼治療についてご興味のある方は、医師またはスタッフにご相談ください。
焦点深度拡張型レンズ(EDOF)について
小児の近視進行を予防するための方法の一つとして最近注目を集めているのが、焦点深度拡張型レンズ(EDOF)です。
このコンタクトレンズは、遠方度数、中間度数、近方度数が複雑に組み合わされた光学デザインとなっており、レンズの中央部分で網膜中心にピントが合い、レンズの周辺部分に向かって網膜の手前でピントが合うように設計されています。周辺部の網膜の焦点ボケを軽減することで眼軸が伸びるのを抑え、近視進行が抑制されると考えられています。
近視抑制効果は、2年間の装用で屈折値で32%、眼軸で25%との報告があります。
オルソケラトジーも近視進行抑制効果はあるとされていますが、衛生管理不足によって角膜潰瘍などのトラブルを起こすことが懸念されます。EDOFはワンデーなので毎日新しいものに交換できるので、その心配はありません。ハードコンタクトレンズに比べて違和感が少ないのもメリットでしょう。
ただし自分でコンタクトレンズの付け外しができることが開始の条件となります。
当院では小学校5年生以上の方を対象としますが、自己管理が困難な方、乱視が強い方、アレルギー性結膜炎がひどい方、その他の理由で装用が出来ないこともあります。
また眼鏡なしでコンタクトレンズだけで済ますことはできません。必ず眼鏡と併用していただくことになります。